船釣りの事故の中で最も重大なのが「転落・落水」だ。海に落ちれば、たとえ泳げる人でも低体温症・疲労・潮流によって命を落とす危険がある。
しかし転落事故のほとんどは「予防できた事故」だ。40年の実釣経験と、実際に見聞きした事故事例から、防ぐための知識をまとめる。
転落事故が起きやすい「4つの場面」
| 場面 | リスクの理由 | 具体的な状況 |
|---|---|---|
| 乗下船時 | 桟橋と船の段差・不安定な足場 | 荷物を持ちながら乗り込む時、潮が速い時 |
| キャスト時 | 体が前傾になり重心が前に | 魚が見えて焦ってキャスト・足元未確認 |
| 魚のランディング時 | 身を乗り出す姿勢 | 大物が来た時に夢中になって柵の外へ |
| 移動中(航行中) | 波で船が揺れる・甲板が濡れて滑る | 手すりを持たずに移動・スリッパ着用 |
転落防止のための基本行動
①乗下船時:必ず両手を空ける
荷物は事前に船に積み込んでから乗船する。両手で手すり・ロープを持ちながら移動することが基本。重いクーラーボックスを片手で持ちながら乗船する行為が最も危険。
②航行中:必ず座る・手すりを持つ
船が走っている間は甲板を歩き回らない。どうしても移動が必要な場合は手すりに沿ってゆっくり移動し、波が来るタイミングを読む。
③釣り中:足元を常に確認する
甲板は海水・魚のぬめり・雨で非常に滑りやすくなっている。一歩動くたびに足元を確認し、滑り止めソールの靴を着用する。
④ランディング時:タモを使う・身を乗り出さない
大物がかかった興奮で身を乗り出し、そのまま落水する事故が多い。ランディングは必ずタモ入れで行い、船の縁から身体が出ないようにする。
「もし転落したら」の基本対応
万が一転落した場合、最も重要なのは以下の3点だ。
- ①パニックにならず浮いていること──ライフジャケットを着ていれば自然に浮く。無理に泳がない
- ②大きな声を出し続ける・手を振る──船上の人に気づいてもらうために声と動作でアピール
- ③体力を温存する──水中での激しい動きは体温低下と疲労を早める。できるだけ静かに浮く
仲間の船に乗る場合:特に注意すること
遊漁船には救命設備の基準があるが、仲間の船(プレジャーボート)では設備がまちまちなことがある。乗船前に必ず確認する。
| 確認項目 | 最低限必要なもの |
|---|---|
| 救命浮輪 | 1個以上・すぐ手が届く場所に |
| ロープ | 浮輪に繋がれたもの・10m以上 |
| 消火器 | 船内に1本以上 |
| 携帯・通信手段 | 電波が届くエリアの確認 |
| 航行ルール | 船舶免許の確認・飲酒運転の禁止 |
よくある質問(Q&A)
Q. 泳げるから大丈夫、という考え方は?
非常に危険な過信だ。海での転落と、プールで泳ぐのは全く別物。波・潮流・重い釣り具・防寒着の重さ・低体温症など、陸上では想定できない要因が重なる。泳げる人でも溺死している事故が多数ある。ライフジャケット着用は「泳げる泳げない」に関係なく必須だ。
Q. 子供を連れて行く時の特別な注意点は?
子供用ライフジャケット着用は絶対条件。加えて「船縁に近づかない」「走らない」「一人で甲板を歩き回らない」というルールを出発前に必ず言い聞かせる。大人が常に目の届く範囲にいること。
Q. 夜釣り(ナイトゲーム)で特に気をつけることは?
夜間は視界が悪く、転落した場合の発見が昼間より格段に難しくなる。ライフジャケットに反射テープを貼る・笛を携帯するなどの追加対策が有効。仲間の船での夜釣りは特に慎重な安全確認が必要だ。
あおたん|釣り歴40年
瀬戸内(しまなみ海道・笠岡諸島・今治沖・松山沖・周防大島周辺)を中心に、遊漁船と仲間の船で実釣。タイラバ・船タコ・バーチカル青物・ティップランを年間を通じて釣行。「再現性のある考え方」を重視した記事を書いています。

